キツネたちはすぐそこに”の号 2012.6

 

 野生の生き物の中で、鳥ならツバメや鳩が人の近くを好みます。動物では、キツネとタヌキが人里近くに住み、そして、犬と猫は人と一緒に暮すという契約を交わして、野生ではなくなりました。
 さて、野生の動物に話を戻しますが、アジアが主な生息地のタヌキにくらべ、地球上に広く分布しているキツネは、世界各地の昔話にちょっとズルい役などでよく顔を出します。そして絵本でも、勿論キツネたちは大活躍。昔も今も、キツネはわたしたちにとって身近です。

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きつね、きつね、きつねがとおる

  伊藤 遊
  岡本 順
  ポプラ社
  \1,365.(税込)
  初版2011.4
  横23cm×縦23cm
  対象:4歳から 

 

 人込みの中では、小さな子に見えるのは大人のお尻ばかりですね。抱っこされるほどは小さくないけれど、まだまだ背が低い“わたし”は、それが不満です。花嫁行列も大道芸も見損ない、レストランの厨房を覗きたくっても、カウンターがじゃまをして、かっこいいコックさんたちが何をしているのか見えないのです。ところが・・・。夜の川沿いを家族で散歩していたら、向こうから狐火が。近付いて来たそれは、狐の行列や狐の大道芸、そして狐のコックさんたち。彼らは狐火の明かりの中で、わたしに楽しげな視線を投げかけてきます。でも、お父さんとお母さんには、どうやら狐たちのことが見えていないようなのです。子どもの目にしか見えないものもあったのですね。こんなにチャーミングな狐たちと行き交うことが出来るなんて、子どもっていいな!

 


 

 

 おかあさんとわるいキツネ

モンゴルのおはなし

 

イチンノロブ・ガンバ−トル
バ−サンスレン・ボロルマ−
つだ のりこ
福音館
\1,470.(税込)
初版2011.11
横27cm×縦26cm
対象:5歳から

 

 モンゴルの北の果ての森に、トナカイを飼って暮らす人たちがいました。森のもっと奥には、ずるがしこい悪いキツネが、人間の赤ちゃんを狙っていました。ある時、キツネがオルツ(木と皮でできた家)の中に赤ちゃんを見つけましたが、お母さんが一緒でした。次の日は、おかあさんがトナカイのお乳を搾っている間に、キツネがやって来てオルツを覗きました。キツネが来た事に気付いたお母さんと、悪いキツネの知恵比べが始まります。落ちている毛を見てキツネに気付く、おかあさんの険しい顔。赤ちゃんをさらったキツネをトナカイに乗って追いかけるお母さんの、必死の形相。やまびこが味方して、坊やを取り返すことができた時の、お母さんの、優しい、幸せそうな顔!タイガの自然を背景にした力強い絵も、たくさんの事を語っています。

 


 

 アトリエのきつね

 

ロ−レンス・ブルギニョン
ギ・セルヴェ
中井珠子
BL出版
\1,365.(税込)
初版2011.11
横23cm×縦28cm
対象:小学生から

 

    

 ある冬の日、ハンターに追われたきつねうちの1匹が中庭に逃げ込んできた。追い詰められたものの眼差しに、画家はそのきつねのことが忘れられなくなる。残り物をあげていたのに、納屋のうさぎを狙ったきつねは、次に会った時は空き家で子どもを産み育てていた。子ぎつねたちに食べ物を運ぶわずかの期間の、画家と母ぎつねの交流。どんなに気に掛けても、野生の動物をまるごと助けるわけにはいかないことを知っている画家と、自分たちで生き延びようとする誇り高いきつねの親子。きつねたちが画家に残していったのは、「きつねのものがたりを描く」ことだった。


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