“おにんぎょうの気持ちは・・・”その2 2003.11

おにんぎょうの気持ちは・・・その1 はこちら

 お人形をだっこしてお店にやって来る小さい人たちは、自分に困った事が起ると、「お人形が嫌って言ってる!」と訴えます。自分の分身としてのお人形が、男の子にも女の子にも必要だと言いますが、なるほど、お人形に自分の気持ちを託し、お人形を支えに出来るのは心強いだろうなと、居合わせたわたしもほっとした気分になります。ところで今日ご紹介する絵本によれば、どうやらお人形たちにも、人間の子どものおともだちが必要らしいのです・・・。

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こんとあき


林明子文・絵
福音館 ¥1,300.(本体)
横21.5cm ×縦28cm

対象:5歳から
  キツネのぬいぐるみ・こんは、砂丘町のおばあちゃんに頼まれて赤ちゃんのお守りにやって来ました。赤ちゃんは、あき。以来ふたりはずっと一緒に過ごしていますが、あきが大きくなるにつれ、こんのほうはだんだん古くなってきました。とうとうこんの腕がほころびた時、おばあちゃんに直してもらおうとふたりは砂丘町へ出かける事にします。長い旅に不安げなあきを、「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と励ますこん。けれどもそのこんも失敗続きで、かばったり守ったりして来たあきの成長に、ちょっと複雑な心情。あきに背負われておばあちゃんの家にたどりつく所では、読み手もついホロリとします。
 こんは、おばあちゃんの手でまた出来立てのきつねみたいになって、あきと一緒に家に戻ります。現実生活では望めないことなだけに、こんの晴れやかな笑顔が嬉しい結末です。





やねうらべやの
   おにんぎょうさん

柳生まち子作・絵 
福音館 ¥1,300.(本体)
横21.5cm ×縦28cm
 
対象:5歳から

屋根裏部屋のお人形さんは、自分が誰なのかも、いつからここにいたのかもわかりませんでした。あんまり長いこと一人でここにいたので、なにも思い出すことが出来なくなっていたのです。そんなある日、お人形さんにネズミの友だちが出来ました。元気を取り戻したお人形さんはおしゃれをしたり、お掃除して部屋を整えたりしました。小鳥の友だちも出来て、一緒のおしゃべりやお散歩で、お人形の生活は楽しいものになりました。けれどもそんな楽しい毎日を送っていても、お人形さんは、ときどきさみしくなったり、何かが足りない気がする時がありました。そんなお人形さんに小鳥は、「ふと、おもったんだけどね、にんぎょうには にんげんの こどもの ともだちが いるもんじゃないの?」   
 



クリスマス人形の 
     ねがい

ゴッデン作 クーニー絵 
掛川恭子訳
岩波 ¥2,000.(本体)
横25.5cm×縦26.5cm
対象:小学生から

 このお話はクリスマスに向けて、三つのお話が進んでいきます。ひとつは、おもちゃ屋さんの棚で「きょうこそ、だれかに買ってもらわなくっちゃ。」と願っているお人形のホリーのお話。お人形たちはみんな「クリスマスには小さな男の子か女の子をもらって、おうちもできる」事を願っていたのです。ふたつめは、クリスマスに誰からも迎えに来てもらえなかった、子どもの家の小さな女の子・アイビーのお話。居もしない「おばあさま」に会いに行くと自分に言い聞かせて、知らない町をさ迷います。その町には、クリスマスを祝う事を忘れてしまった、寂しい夫婦が住んでいました。
 ゴッデンの名作にクーニーが絵をつけた、宝石のような1冊。クリスマスの朝、ちいさなアイビーとお人形のホリー、それにジョーンズさん夫妻に奇跡のように幸福が訪れ、読み終えて満たされた気持ちになれます。





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