“ことばとであう”特集 その2 2002.11

 しりとり、回文、なぞなぞ等のことば遊びは勿論、ちょっとした言い回しも「だじゃれ」と言って子どもたちは喜びます。IT世代なのに、落語なんかも大好きです。乾いた砂地に水が沁みこむように、いくらでも新しい言葉を吸収する年代だから、言葉に対して敏感に反応するのでしょうか?「何かおもしろいこと言って!」と言われたとき、ことば遊びのひとつもさっと出る大人でありたいのですが・・・。"ことばとであう"特集第二弾です。 ≪ "ことばとであう"特集その1 はこちら)

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さるのオズワルド

マチーセン作 
松岡享子訳
こぐま ¥1,300.(本体)
横21cm ×縦19cm

対照:幼児から

 さるのオズワルドは、仲間たちとのんびり暮らしていた。日が昇れば目覚め、お腹が空けばりんごを食べて―。オズワルドたちの悩みは、ボスのいばりやが横暴なこと。だれよりもでっかく、だれよりも乱暴、みんなを家来にして威張り散らしている。とうとうある日オズワルドは、いばりやに向かって叫んでしまった。"いやだ!"すると仲間のさるたちもみんな、"いやだ!""いやだ!""いやだ!" 孤立してしまったボスの威張りやが改心したのは言うまでもない・・・と、ここまではお話しのあらすじ。このお話しのもう一つの楽しみは、ことばあそびのおまけが付いていることです、こんな具合に。                     

  そして、いばりやが しりとりを するとき―――おっとまちがい、のみとりをするとき
  これをきいて、さるたちは、「あいよ、まがった」―――おっとまちがい、「いいよ、わかった」
  とうとう いばりやは とっしんした―――おっとまちがい、けっしんした。


 各ページに言葉の取り違いや言い間違いをちりばめ、(訳者はさぞや苦労されたでしょうけれど、)小さい読者を別の意味でも引き付けているのが、この本のへそ、―――おっとまちがい、ミソ!です。でもこんな風に部分的に切り取って解説してしまっては、面白さも半減ですね。実際に本を手にして、一冊の絵本の中を、ストーリーとことばあそびが絡み合いつつ流れる様子をお楽しみください。





 

しりとりのだいすきな
    おうさま

中村翔子作
はたこうしろう絵 
すずき ¥1,400.(本体)
横28cm ×20.5縦cm 
対照:幼児から

 あるお城に、しりとりの大好きな王さまが住んでいました。なんでもしりとりに並んでいないと気が済みません。 例えば王さまの部屋は、王さま→窓→ドア→アルバム→虫めがね→ねこ→こま→マント→時計→イス→水槽→植木鉢→地球儀・・・と言った具合に、人や家具が並んでいます。やっかいなのが食事の時間。「こんやは はサンドイッチから たべるぞ」という王さまのことばに、家来たちはおお慌て。次はちくわをお出しして、その後にワカメを。その後はえーーっと、目玉焼き!最後はプリンと決まっているのですが、この調子ではとてもプリンまでたどりつけそうもありません。こんな毎日に困った家来たちは、ある日王さまを「ああ もういい!しりとりは ごめんだ!」と言わせる、すごいアイデアを思い付きました。なるほど、なるほど。読み書きに興味を持ち始めた小さい方にプレゼントしたら、絶対に喜ばれます。

 

 



へんしーん 

谷川晃一作・絵
偕成社 ¥1,000.(本体)
横16cm×縦24cm
対照:幼児から

 この絵本は各ページに個性的な顔が描かれ、しかも上下二つに切れ目がはいっています。最初のぺーじには「へん かな」と書いてあります。下段のページを開けると、」「かな」が「だよ」にかわって、帽子をかぶった髭ネコの登場です。なるほど変ですね。上段と下段をアトランダムにめくっていくと、「へん である」「へん だ」「へん でもいい」「へん てこりん」「へん かしら」という言葉の展開とともに、いよいよ奇妙で味のある顔が現れて、読み手を笑わせてくれます。
 一般に、文字の大きさや文章量で絵本の難易度を決めることが多いようですが、この作品を手に取れば、絵本ってそんなに単純なものじゃない!とわかっていただけるのではないでしょうか?この絵本は各ページわずか4〜6文字で成立っていますが、言葉の奥深さが実感でる1冊です。ことばの可笑しさを知り、ことばあそびを楽しめる年齢になってからのお楽しみとして、どうぞ!





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